すむむ。コミュニティ
住まい探しのコミュニティ・プラットホーム。
Photo/Ayumi Yamamoto
Text/Rie Nishikawa
Edit/Tami Okano
Photo/Ayumi Yamamoto
Text/Rie Nishikawa
Edit/Tami Okano
築56年のマンションの一室を、ほとんど自分たちで改修したという美容師の宮﨑陽平さんと香織さん夫妻。賃貸住宅ながら、内装は入居者が自由に手を入れることができ、床は幾何学模様の木材のピースを1枚ずつ手張り。壁や天井もそれぞれ異なる色で塗るなどして、お気に入りの空間を作り上げました。古い建物だからこその大きな窓から差し込む柔らかな光。この部屋には、ヴィンテージマンションならではの味わい深さがあります。
熊本出身の宮﨑陽平さんと福島出身の宮﨑香織さん、共に美容師で、紹介制の美容室『yummoサロン』を営む。サロンも自宅と同じヴィンテージマンション内にある。カットを得意とする陽平さんとカラーリストの香織さんは、同じ職場でチームを組んだことが出会いのきっかけ。営業時間や定休日を設けず、自分たちのペースで暮らしと仕事を両立させている。
リビングの床は市松模様のタイルをイメージ。足場材をカットし、ペンキで塗ったものを1枚ずつ貼っていった。ベランダには鉢植えの植物が多数。グリーンは香織さんの趣味のひとつでもある。
キッチン背面。平皿が立てかけられている棚はインド製。よく使う皿やカップは見えるところに。棚下には自家製の保存食。今年は陽平さんが手がけたという梅仕事やシロップなど。評判がいいのは梅味噌という。
以前暮らしていた部屋が手狭になったことから、住み替えを検討し始めたのが8年ほど前。このマンションに空室が出たことを人づてに知り、大家さんに直接交渉をして入居したという。最初から改修が前提。行きつけの書店が同じ建物内にあり、自由に改修した空間を見ていたので、元の状態はあまり気にならず。改修のアイディアもすぐに湧いてきた。
まずは玄関からの導線に沿って、壁の色のグラデーションを決め、改修プランを立てていった。どの壁を壊し、どの柱を残すのかといった構造の相談を施工会社に、床材を知人の足場会社に相談した以外、床、壁、天井はもちろん、水回りまで、ほとんど自分たちでDIYしたという。
「特定のジャンルやスタイルに限らず、“好きなもの”がいろいろあって、部屋をどうまとめようかと悩んだ時期もありました。でも結局、その“好きなもの”を集めたら、私たち色の部屋になりました」(香織さん)
「2人の好きなものが似ていて、お互い昔から持っていた家具も馴染んでいるし、特に雑貨は一緒に買ったものも多いですね。ものが多いと掃除が面倒なのでは? とよく聞かれますが、そう大変でもありません(笑)」(陽平さん)
玄関。元々の壁の色はグレーで、その上部を赤にペイントしてツートンに。キッチンの壁の赤とは少し色味を変えている。玄関ドアに挟んでいるのは古い建具。部屋の中へと風を通している。
玄関脇。若い頃から「毎日花のある暮らしがしたい」と考えていたという香織さんが、少しずつ集めた花器が置かれた一角。ヴィンテージのガラスや陶器など、形や大きさ、スタイルもいろいろ。
ダイニングの壁はマスタード色に。写真正面、寝室へと続く引き戸は全面ガラスで、ヴィンテージショップで購入。広く見える視覚効果も。リビングとの間の壁を抜き、寝室の奥まで光が入るようにしている。
ベッドルームでくつろぐ愛猫クロロ。ベッドカバーは西洋民芸店「グランピエ」で購入したもので、細かな刺繍が施されている。香織さんが「最近気になってきた」という少し大人っぽい雰囲気のテキスタイル。
部屋の広さは約60㎡。たくさんのものに囲まれているけれど、並べ方の上手さもあって、不思議なほどまとまりがある。印象的なのは、部屋のあちこちに鉢植えの植物や生花、ドライフラワーが飾られていること。その草花がこの部屋のまとまりに関係しているように感じる。
家具は西洋ヴィンテージや昭和レトロな雰囲気のある日本の棚など、実にさまざまだ。聞けば、“もらいもの”が多く、パン屋さんの知人からはショーケースを、インドジュエリーを扱っていた友達からはソファを、そして映像監督からは撮影で傷がついてしまった丸テーブルを。「欲しいと思っていたものがやってくる」と香織さん。
「住んで8年。この部屋が大好きなんです。一番気に入っているのは、アルミサッシの大きな窓。午後には西陽が差し込んできて、窓から見える夕陽もとてもきれい」(香織さん)
「この部屋に住み替えて、家の中で過ごすことが多くなりました。香織さんは趣味の陶芸やキャンドル作りを、僕は器の金継ぎをしたりして過ごすこともあります。食事はほとんど外食をせず、ヨーグルトなどから天然酵母を作って、パンを焼くこともあります」(陽平さん)
数多くの調理道具やスパイスなどが並ぶキッチン。特によく使うものは、しまって隠すのではなく、基本的には見せる収納に。たくさんの食器の中には、香織さんが作った器もある。
キッチンは蛇口と壁面の吊り戸棚のみがオリジナル。タイルを貼り、シンクや調理台を設えた。改修にあたっては、キッチンの壁を赤にしよう、と最初に決め、キッチンから部屋全体のペンキ塗りをスタートさせた。
陽平さんが高校生の時に購入したサイドテーブル。引っ越しを重ねても、ずっと大切に使ってきたもので、この部屋の雰囲気にも合っている。現在は香織さんのデスク用スツールとして使われている。
香織さんの実家で使っていた建具のフレームを、植物と一緒にオブジェとして天井から下げている。西側の窓と並行して残る鴨居は、改修前の部屋の名残りであえて残してある。かつては窓と部屋の境に襖があった。
築56年と建物は古いものの、居心地の良さからか、用途別に複数の部屋を借りている住人が多いという。実際、宮﨑さん夫妻も6年前、同じ建物内にサロンをオープン。条件に合う店舗物件が見つからず、たまたま空いた部屋を改装して、「とりあえず」と思って初めたが、職住近接で時間にゆとりも生まれた。
「マンション内に4部屋借りている人もいると聞きます。どの部屋もそれぞれがリノベーションしていて、ペットが飼えるのも魅力。クリエーターも多く、みんな仲良くしています」(陽平さん)
「サロンのお客さんにも住人の方がいますし、最近、空いた部屋に友人を紹介したばかり。荷物を預かったり、留守中に猫を見てもらったり、今の時代で、昔ながらの近所付き合いができるのもいいところです」(香織さん)
古い建物は自然と隣人との距離が近くなるもの。ヴィンテージマンションの持つ温かな雰囲気は、空間だけでなく、人と人の関係も包み込んでくれる。
ソファ横のサイドテーブルは、陽平さんが大学生になった時に買ったもの。鉢植えの植物は、室内環境に合わせて、シダ類など湿気を好むグリーンを多めにしているという。植物に水やりするのが、毎朝のルーティン。
ダイニングキッチンの幾何学模様の床も元は足場板。リビングとはペンキの種類を変えてあるので、同じ素材でも足触りの違いが楽しめる。改修で一番大変だったのがこの床で、完成に数ヶ月かかったという力作だ。