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プロに聞く_Vol.05

〈キャンプデザイン/藤田雄介〉
住まいのデザインと住み替えのコツ

Photo/Mie Morimoto
Text & Edit/Tami Okano

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Photo/Mie Morimoto
Text & Edit/Tami Okano

建築デザイン事務所、キャンプデザインを主宰し、数多くの住宅設計を手がけてきた藤田雄介さん。訪ねたのは、築40年を超える団地の一室。4年ほど前に藤田さんがフルリノベーションを行った。ギャラリーのように美しい真っ白なキッチンに、ひときわ目を引く黒の布框⼾(ぬのかまちど)。住宅名は「白と黒の家」。間取りの変更が難しい壁式の鉄筋コンクリート造にあって、どのように施主の理想を受け止め、住まいを一新したのか。藤田さんに聞きました。

PROFILE 藤田雄介
藤田雄介さん

1981年兵庫県生まれ。手塚建築研究所勤務を経て、2010年に〈キャンプデザイン〉設立。新築はもとより、木造の日本家屋から鉄筋コンクリート造の団地リノベまで、数多くの住宅改修を手がける。代表作に「柱の間の家」、「芦花公園の住宅」など。設計の軸に建具を活かしてきた経験と共に、建具専門メーカー「戸戸」も運営。著書に、『建具の手がかり: 境界を操作する39の手法』がある。
https://camp-archi.com

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コンパクトな団地の一室を
美しさ優先の「理想の家」に。

神奈川県藤沢市。施主は3人家族で、当初は同団地の別の棟に住んでいた。古くからある団地ならではの住環境が気に入り、そこから最上階のこの部屋に引っ越すにあたり、改修設計を藤田雄介さんに依頼。雑誌で藤田さんが手がけた集合住宅の改修事例を見て、ぜひこの人に、と思ったという。

施主が気に入った住環境とは、日当たりと風通しの良さ。南北に開口があり、隣の棟との間には緑地帯が設けられていて、適切な距離も保たれている。一番気に入ったのは、住空間のコンパクトさ。延床面積は約58㎡。「広い家がいいと思ったことはなく、もともと家は50平米台と決めていた」と施主。「必要最小限の物だけで、利便性より美しさを優先した住まい」というのが施主の望む家だった。

住まいを訪れてまず驚くのが、白を基調に整えられた、キッチンの清々しさだ。シンク自体は壁付のシンプルなものだが、部屋の中央にドーンと作業台を兼ねた白の造作家具が置かれている。リビング側にはうつわ類を収納、シンク側にはビルトインタイプの冷蔵庫や冷凍庫が収められていて、壁を覆う背の高い家具や家電が一切なく、すっきり、広々。このキッチンが、住まいの約4分の1を占める。

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天井も壁も内壁は漆喰のローラー仕上げ。住まいの約4分の1をキッチンとし、中央に作業台兼収納台を置いた。目線の高さには物を置かず、生活感を感じる要素を極力減らしたことで、美しい白の余白が際立つ空間に。

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作業台兼収納台の南側(リビング側)には、主にうつわ類を収納。開き戸の上部はあえてオープンにして、お気に入りのうつわをディスプレイしている。キッチンエリアの床はモルタル仕上げ。

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リビングからキッチンの造作家具を通して、北側の窓を見通す。リビングの床はオーク材のフローリング。床材を変えることで、扉なしでも領域の違いをはっきりと感じることができる。

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躯体であるコンクリートの壁が、居住空間を4つのエリアに仕切る。白く塗り込めた壁の陰影もまた美しく、各エリアを縁取るフレームのよう。食事はリビングの丸テーブルでとる。

「建物の構造は、壁式の鉄筋コンクリート造で、間取りの変更が難しく、躯体で仕切られる4つのエリアの中でいかに⽣活を更新するかを考えた」と藤田さん。そのひとつがキッチンで、「キッチンだけで考えるとすごく広いし、ダイニングでもないんだけど、自然と家族が集まる、ちょっと特別な場所になっています」と続ける。

4つのエリアのキッチン以外を、⽔回り、寝室、リビングに割り当て、リビングの引き戸の向こうに子供の学習スペースを、寝室の枕上部にクローゼットの代わりとなる収納スペースを設けるなど、限られた空間を無駄なく使う工夫を随所に散りばめた。各エリアそれぞれに「充分な余白」が残されているのも印象的だ。

「改修にあたり、お施主さんと何度もディスカッションをしたのですが、住まいに対する考え方がしっかりされていて、住み方も柔軟。躯体で仕切られる4つのエリアの中で、新しい住み方をどう再編集するか、一緒に考えていきました。玄関脇の水まわりは、トイレとお風呂がほぼ一室。それも、この広さの中で、どう住むのがいいかを一緒に考えたからこそ出せた答えです」

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竣工後も施主との交流が続いているという建築家の藤田雄介さん。改修では、既存の環境を活かしつつ、断熱など住まいとしての機能向上にも力を注ぐ。携わった団地再生プロジェクトでグッドデザイン賞を受賞した経験もある。

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廊下とキッチンの間に入れたオリジナルの布框⼾。床から天井までのフルハイトドア仕様ですっきりとした見た目に。黒のインド綿で、夜になると部屋の明かりがほんのり透ける。布は張り替え可能。

藤田さんの設計の魅力で外せないのが、空間の繋がりを保ちながら個別の居場所をつくる「建具」使いの巧さ。この家では、南側の窓の、既存のアルミサッシの内側に、木枠のガラス戸を入れた。インテリアとしての統一感はもちろん、改修で新たに設けた内壁と建具による内窓で、断熱性能もアップ。白のキッチンエリアと廊下の間には、オリジナルの布框⼾を入れた。

「布框⼾には、透け感のある⿊のインド綿が張られているのですが、これはお施主さんが選んだ生地。この⿊の建具が入ることで、ものすごく空間が締まったな、という印象があります。この家は、⽩の余⽩と⿊の建具の対⽐で出来ている。その対比の妙は、僕にとっても新鮮で、いい学びになりました」

施主は「私たちの希望をよくよく汲んで、カタチにしてくださった。だから本当に暮らしやすいし、理想の家ができました」と話す。住み始めて約4年。今も保たれている美しい余白が、この家の過不足のなさを物語っている。

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壁の余白を残すため、リビングにもテレビ台などの収納家具を置かないという徹底ぶり。写真左手、南側の開口に内窓として設置した木枠のガラス戸が、木質のインテリアとよく馴染む。

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リビングの一角。改修前は和室で、押し入れだった奥行きのあるスペースに子供の学習スペースを設えた。使っていない時は、写真左手、白の引き戸で隠すこともできる。

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寝室。枕上部が家族のクローゼット。このボリュームに3人分の衣類が収まっているのも驚きだが、「収納は極力少なくしてもらいたい、と伝えました。あればあっただけ入れてしまうから」と施主。ベッド代わりに床に段差を付けた。

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水回りは玄関ホールと一体でデザイン。玄関ドアの横に小さな洗面台を設けた。帰宅してすぐの手洗いに便利。写真左手、ガラス壁の向こうに、浴室とトイレがある。

5 Questions!
住まいのデザインと住み替えのコツ

Q1 住まいの個性はどこに出る?

住む人の「住み方」が家の個性になる。なので、設計者としては、お施主さんとのコミュニケーションをできるだけ深くとることが重要だと考えています。具体的な要望を聞くだけではなく、普段あまり考えていないことまで掘り起こしていくような対話から、家の個性となる住み方の「独自性」が現れてきます。

Q2 家が「自分にフィットする居場所」になるために必要なことは?

今はインターネットなどでも家のさまざまなイメージが集められると思うのですが、それだけではなく、自分たちの家に対する潜在的なイメージを探ってみる。それは建築家が一緒に探っていく部分でもあるのですが、今までの暮らし方から、この先の生き方まで、一度立ち止まって深く考えることが、「自分にフィットする居場所」作りに欠かせないプロセスだと思います。

Q3 ここだけはこだわったほうがいい、と思うプロ目線のポイント。

採光ですね。陽の入り方にはこだわったほうがいい。明るい家だけがいいというわけではないのですが、明るければ薄暗い場所もつくれるので、建物として採光がきちんとある家や場所を選ぶことをおすすめします。

Q4 住み替える時、何を一番に考えたほうがいいですか?

どれかひとつ、というより、自分たちが何にこだわりたいかの「優先順位」を決めておくこと。立地、広さ、築年数…… 天井高はどのくらい欲しいとか、キッチンはどういうスタイルがいいとか、いろいろあると思うのですが、すべて実現するのはなかなか難しい。優先順位をしっかりと決めておくのが、理想の家に辿り着く早道なのかなといつも思います。

Q5 印象に残っている住み替え体験と、住み替えてよかったこと。

僕自身、住み替えはしょっちゅう。独立してから東京都内で10回近く引っ越しをしています。良かったことは、東京をよく知ることができたこと。街ごとの魅力や地域性が、住んでみるとよくわかる。今までとは違うエリアに引っ越すことで生じる暮らし方の変化や視野の広がりも住み替えの楽しさかなと思います。

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