すむむ。コミュニティ
住まい探しのコミュニティ・プラットホーム。
Photo / Ayumi Yamamoto
Text / Hisashi Ikai
Edit / Tami Okano
Photo / Ayumi Yamamoto
Text / Hisashi Ikai
Edit / Tami Okano
雑誌や書籍の編集者・ライターとして活躍するほか、ポッドキャスト『デザインの手前』のパーソナリティを務めるなど、さまざまなメディアでデザインの最新動向を発信し続ける山田泰巨さん。「取材を通じて知り合ったデザイナー、アーティストの魅力的な作品に囲まれて過ごしたい」と選んだ家は、築50年近いヴィンテージマンションの一室。暮らしに対する自らの感覚と率直に向き合い、好きなものとだけ触れ合う時間について聞きました。
1980年北海道生まれ。『商店建築』『Pen』編集部を経て、2017年よりフリーの編集者・ライターとして活動。建築、デザイン、アートを中心に、雑誌『Casa BRUTUS』『GQ』『ELLE DÉCOR JAPON』などに寄稿するほか、原田優輝とともにポッドキャスト『デザインの手前』の運営を行う。
Instagram_ @yoshinaoyamada
リビング・ダイニングの一角。納戸のルーバーの扉には、わら細工たくぼの「卵つと」など、伝統的な藁編みの道具をまとめてディスプレイ。食器拭き用のクロスなどキッチンまわりの布類、食材は、竹カゴに入れて重ねて収納している。
南向きの窓が連続する明るい室内。賃貸ゆえに大掛かりな改修はできず、襖を取り外すなどして、空間を大きく使っている。一人暮らしとは思えないほどの椅子の数に驚くが、その日の気分や用途に応じて、使い分けているという。
東京都内の集合住宅の一室。2LDKの間仕切りを取り払い、70㎡の空間をほぼワンルームのように使っている編集者の山田泰巨さん。インテリアは、世界的なデザイナーが手がけた家具に加え、人気作家の陶器やガラスオブジェ、新進アーティストの作品など、洗練されたデザインのものばかりで、セレクトショップかギャラリーと見間違うほどだ。
「仕事でアーティストやデザイナーと会う機会も多く、気に入ったものを購入しているうちに自然とモノが増えてしまって。あまりにも食器やグラスの数が多いので、訪ねてきた両親に『喫茶店でも開くつもり?』と聞かれたことすらあります(笑)」
以前は、代々木上原に暮らしていたが、手狭になったことに加え、住み始めた頃と街の様子が様変わりしたことで転居を決めた。
「新しいレストランやカフェができて活気が生まれるのはいいことですが、街の人気が高まるにつれ人で溢れ、せっかくの休みも近隣が騒がしくて心が休まらないな、と感じてしまったんです」
陶器を中心としたコレクションを飾っているシェルフキャビネットは、デンマークのブランドHAYの「New Order」。デザイナーはステファン・ディーツ。モジュール式で、多様なアレンジが可能。
キャビネットの扉を開くと、作家もののうつわが現れる。「ぷくっとした厚みを持った食器が好き」という山田さん。扉のない下段には、アニマルモチーフのオブジェをまとめて並べている。
ヴァージル・アブローとイケアのコラボレーションで生まれたガラスキャビネットには、山野陽子アンダーソンをはじめ、大好きなガラス作家の花器やオブジェを収納。あえて開口を背に置き、透過する光で浮かび上がるガラスの輪郭を楽しんでいる。
仕事は多忙を極めるが、「特にテーブルの上やキッチンが雑然としていると気持ちが落ち着かない」と山田さん。日頃から身の回りの整理整頓のクセがついているという。冷蔵庫は高さを抑えたタイプを長年愛用している。
3年前に引っ越した現在の家の立地は、すぐそばに大きな公園や大学がある静かな住宅街。天気が良い日にはベランダで小休止している鳥たちが、心地よいさえずりを聞かせてくれる。こうしたゆとりのある時間をさらに豊かにしているのが、室内に点在する名作家具の数々だ。
「椅子の数はちょっと多すぎるかもしれませんが、気分や目的に応じて使い分けているんです。この部屋には、 “自分の居場所”がいくつもある。改めて見渡すと、ダイニングの家具は、アルヴァ・アアルト、モーエンス・コッホ、ハンス・J.ウェグナーなど、北欧の巨匠たちが半世紀以上前にデザインしたものばかりだから、意外と家具の趣味はコンサバなのかもしれません。時を経ても淘汰されないものには、それ相応の価値と理由が存在しますからね」
長持ちで使い勝手が良く、トレンドに押し流されることがない。見た目の良さだけではない本質的なものの確かさが、山田さんの心を惹き寄せるのだろう。インテリアの選定に明確なルールを設けているわけではないが、なるべく手軽な量産品には手を出さず、自分が本気で“好き”と言えるものだけを身の回りに置こう、とだけは心に決めている。
「妥協をせずに自分が好きなものだけに囲まれて過ごせるのは、一人暮らしの醍醐味かもしれません。もちろん量産品を否定しているわけではなく、戸棚に隠れる整理用のトレイは代えがきかず、便利グッズを使っています」
収納棚の天面をディスプレイに活用。稲葉知子や蠣﨑マコトのコンテナなど、一連のガラス作品に吉田紳平の白い平面作品がよく合う。白い壁に映えるカラフルなオブジェは、天井から吊り下げられた和田朋子(TOUMEI)のモビール。
仕事部屋。襖を取り払い、リビングや広縁とひと続きの空間とした。窓の外の緑を眺めながら、ゆったりとした気持ちで執筆に専念できる。写真右手、赤い布地が張られた椅子は、アルテックの「E45」。デザインはアルヴァ・アアルト。
仕事部屋から寝室を見る。寝室周りの障子は「透過する光が心地よいので」そのまま残した。寝室壁面には、図書館用の書架を設置。広縁にも本棚を設け、書籍や雑誌などの大量の紙資料をまとめて管理している。
窓間壁にぴったりと収まるように置かれているのは、長年愛用しているセシリエ・マンツの椅子「Moku」。「フラットな座面の椅子やスツールは、ディスプレイにもよく活用します」。左は吉田直嗣、右はロナン・ブルレックの花器。
オブジェやアート、うつわなどを置く場所を限定し、壁の上部に余白を残しているのもポイントだ。
「目線の高さにものを飾ると雑然とするので、置く場所は腰高くらいまでと決めています。特にリビング・ダイニングは、白い壁をそのまま残しておいた方が、空間がより広く開放的に感じられます」
家具は落ち着きのある名作揃いだが、部屋のそこかしこに飾られたオブジェは現代作家の手によるものが多い。一見しただけでは、どのように使うのかわからない抽象的なカタチのものもある。
「家具とは違って、特定の機能や用途を持たないものの見立ては、持つ人の自由。『日常生活の役に立たないものを持っていて何の意味があるの?』と疑問に思う人もいるでしょう。でも、僕にとってはアートも自分らしい暮らしに必要な、とても大切な存在。眺めているだけで気持ちが楽しくなるんです」
心に作用するたくさんのモノたちを囲まれ、大切に愛でること。日常生活を支える、どんなに小さなものにも意識を及ぼすことで、家で過ごす時間がより貴重で豊かなものに感じられるのだと山田さんは教えてくれた。
リビングに至る廊下の床には、絵画や写真などの平面作品が並ぶ。以前訪ねた家で床にアートを並べているのを見て、いいなと思い、真似てみたという。「取材で素敵な家を訪れるたびに、部屋づくりのさまざまな手法を学んでいます」
ときには床に寝転び、リラックスしたくなるという山田さん。ラグはファッションブランドDOSAのもので、奈良の「くるみの木」の石村由起子さんから譲り受けた。ラグに置いたクッションは肥田野優希。足触り、手触りの良さが気に入っている。