すむむ。コミュニティ
住まい探しのコミュニティ・プラットホーム。
Photo / Ayumi Yamamoto
Text&Edit / Tami Okano
Photo / Ayumi Yamamoto
Text&Edit / Tami Okano
モデルであり、イラストレーター、雑貨デザイナーとしても活躍する香菜子さん。3ヶ月ほど前に夫と引っ越してきたばかりの住まいは、建築家・井出共治の代表作として知られる名作集合住宅の一室。長く都内のマンションで暮らし、2人の子供の独立などを機に鎌倉との二拠点生活を経験。そしてたどり着いた今の住まいとの出合いやその魅力を聞きました。
モデル/クリエイター。1975年生まれ。モデル活動とともにファッションやライフスタイルを紹介する書籍を多数出版。2020年よりキャラクター「おぱんつ君」を考案。絵本やぬいぐるみ制作、作品展示などの活動も展開。「おぱんつ君」は、コロナ禍にファー生地のハギレで作ったぬいぐるみが原点で、熱烈なファンも多く、アパレルブランドとのコラボレーションも行っている。
Instagram/@kanako.lotaproduct
住戸の南西に位置するリビング。ガラスの大開口の向こうに約70平米のルーフガーデンがある。柱や梁のないフラットな白い天井と、窓からの光を反射するちょっと年季の入ったつややかなフローリングも美しい。
リビングとルーフガーデンの間のガラス窓。L字に折れ曲がる特徴的なデザインで、内と外の一体感をより強く感じることができる。ルーフガーデンの手すり側には、3m以内の樹木を地植えできる植え込み枡があり、ローズマリーやコウゾなどを植えた。
玄関から廊下を抜けてリビングに入ると、一面のガラス窓と木々の緑が目に飛び込んでくる。南西に大きく開いた窓の向こうには、約70平米の広い広いルーフガーデン。「初めてこの部屋を訪れたとき、この窓からの緑の景色がとても素敵で、ここに住みたい、と思いました」とモデルの香菜子さんは言う。
竣工は1986年で、設計を手がけたのは、建築家の井出共治。宅地開発が難しい丘陵地の急斜面に目を向け、階段状に連なる高品質の集合住宅を数多く手がけた。この集合住宅は、全14棟・81戸。どの住戸にも同様に「広い広いルーフガーデン」が設けられていて、周辺の自然と各住戸の庭の樹木が一体となった外観は、遠くから見ても壮観。都市型マンションとは異なる、独立した住まいの集合体といった面持ちで、まるで集落のよう。室内に入ると、森の中の別荘さながら、どの方角の窓からも、ダイナミックな緑の景色を臨むことができる。
ルーフガーデンの住居側はデッキ張り。アウトドアリビングとしても楽しめる。上階の庭は、下階のリビングの断熱にも寄与。躯体は堅牢、外装はシンプルで、時代に先駆けた環境共生住宅として知られている。
「都内の仕事場との往復は、気持ちの切り替えになる。鎌倉住まいに比べると、移動はずっと楽になった」と話す香菜子さん。リビングのキャビネットは既存の天板のみを活かし、2人の本やレコードを入れる扉なしのオープンラックに。
廊下からリビングのガラス窓の向こうの緑を見通す。家に帰るたびに見惚れるという香菜子さんが大好きな住まいのワンシーン。延床面積は約210平米。ゆとりの広さの背景には「戸建を超える集合住宅をつくりたい」という建築家の思いがある。
元は一室空間だったリビング・ダイニングに壁を作り、壁の向こうにコージーなダイニングスペースを設けた。縦のルーバーを用いたのは、夫のアイディア。リノベーションの経験は、この家で4軒目。
引っ越してくる前は、1年ほど鎌倉で暮らしていた。
「2人の子供が独立し、これからの暮らしを考えるいい機会だなと思い、25年近く住んだ都内のマンションから鎌倉へ。仮住まいの賃貸住宅に暮らしながら、鎌倉での家探しを続けていましたが、なかなか理想の家に巡り合えなくて……。都内にある仕事場との往復も、予想以上に大変だな、と感じはじめていたある時、夫が『いい家があるから見に行かない?』と。窓から“樹々の緑だけ”が見える家がずっと私の憧れだったので、念願叶って、ここに決めました」
夫は建築好きで、以前からこの集合住宅のことが気になっていたという。東京からの移住先を探していた当時は空きがなく諦めていたが、リサーチを続け、タイミング良く不動産情報を得ることができた。
建物の構造は、壁式鉄筋コンクリート造。コンクリートの耐力壁と床だけで建物を支えているため間取りの変更も容易だが、今のところ既存の間取りはほぼ変えず。キャビネットの天板をはじめ、受け継いだ上質な無垢材は大切に活用しつつ、和室を洋室のアトリエに変えるなど内装を中心に手を入れ、「自分たちの家に整え始めたばかり」という。
リビングとの間に壁を造作したダイニング。閉じ過ぎず、開き過ぎずのルーバー効果でほどよい籠り感があり、居心地がいい。ダイニングテーブルは、鎌倉暮らしの際に購入。夫婦ふたりの食事にちょうどいいサイズ。
キッチンは新たに壁を造作してクローズドタイプに。シンク背面の収納家具は、香菜子さんの希望に沿って大工さんが現場施工で造り付けた。壁から持ち出しの白の作業台の上には、手元を照らす照明も設置。使い勝手の良さは、積み重ねてきた暮らしの経験あってこそ。
クローズドながら、シンク正面に窓のある明るいキッチン。まるごとシステムキッチンに入れ替えることもできたが、「便利過ぎるシステムキッチンは苦手」と香菜子さん。ガス台など好みの設備を個別に選び、組み合わせた。壁の白タイルは既存のまま。
キッチンの延長線上にあるユーティリティスペースの一角。勝手口に隣接した造り付けの作業テーブルは、竣工当時からのものと思われる。テーブル下には、小型のワインセラー。「今のお楽しみは、白ワイン。自分の時間を楽しみたい」
築40年。住まい選びにおいて、古さはデメリットにならなかったかを聞くと、夫は「ぜんぜん」と一言。2人にとって、新築ではないことは、むしろ前向きな要素で、「昔からヴィンテージならではの味わいが好きですし、時を経ても大切にされているもの、残っているものには、それ相応の良さがありますよね」と2人。特にこの建物は、住民たちに長く愛されてきたこと、絶えず続けられてきた外構などの管理の素晴らしさを感じるという。
ちなみに、この集合住宅、丘陵地の高台に立つため、最寄り駅からはずっと上り坂、各棟のエントランスから住戸までのアプローチは階段のみだ。
「でも、それもデメリットとは感じていなくて、毎日のいい運動になる。以前はピラティスのスタジオに通っていましたが、ここに引っ越してきてからは、駅と家との行き来が運動になるから、それもいらないくらい(笑)。坂道も階段もあるけれど、家に帰ってリビングの窓からの景色を見るたびに、やっぱりここに住んでよかった、と思うんです」
モスグリーンの壁にカーペットと、しっとり落ち着いた雰囲気のラウンジルーム。リビング・ダイニングのほかに4室ある個室の一室で、ゲストルームにも最適だが、今のところは、静かに読書を楽しむ「家の中の別荘」のような場所。
寝室。テディベアがちょこんと収まる壁のニッチは、エアコンを床置きから壁付けに変更するにあたり、その配管を隠すためにふかした内壁の奥行きを活かしたもの。すっきりと美しく、読みかけの本や小物を置くのにも便利。
畳敷の和室から、白が基調の洋室に改修したアトリエ。床は足場板。北東の2面採光で、リビングとはまた異なる柔らかな光が心地よい。棚で壁を覆わず、ポスターやシルクスクリーンの版は床置きに。
アトリエの入り口付近、長い廊下のつきあたりは、香菜子さんがこの家の中で好きな場所のひとつ。十字のくり抜きが印象的な椅子は、和製ヴィンテージとして人気のWINDS太平・チャーチチェア。香菜子さんが好きな家具は、イギリスのアーコールチェアなど、素朴で温もりのあるデザインのものが多い。