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ひとりですむむ

東京都豊島区
古川真由子

コンパクトな住まいに満ちる
日常の景色をいとしむ。

Photo / Ayumi Yamamoto
Text / Hisashi Ikai
Edit/Tami Okano

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Photo / Ayumi Yamamoto
Text / Hisashi Ikai
Edit/Tami Okano

4年ほど前の住み替えをきっかけに、 “自分らしい日常空間”を手に入れたという古川真由子さん。コミュニケーションディレクターとして数多くのデザインプロジェクトに関わり、インテリアへの造詣も深い古川さんだが、暮らしを彩るのは、窓の外の景色、日常空間の心地よさ、街の人とのつながりなど、「家を取り巻く全体のバランス」だと話す。そんな彼女が、出かけても「すぐに帰りたくなってしまう」と言う、お気に入りの住まいを見せてもらいました。

PROFILE Mayuko Furukawa

大阪府生まれ。ザ・コンランショップの広報を担当後、オーストラリア生活を経てフリーランスに。現在はコミュニケーションディレクターとして、インテリアやライフスタイルにまつわるプロジェクトマネジメントのほか、デザイナーと企業の橋渡し、海外業務のサポート、ライターとしても活躍している。最近関わった主な仕事に「山梨県デザインプロジェクト」など。

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住まいの広さは約40㎡。写真右手に壁付のキッチン。コンパクトな空間にあっても十分な動線を確保するなど、居住空間全体のバランスや余白を大事にしている。

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壁面にはデザイナー、ヘラ・ヨンゲリアスの「コート ドッツ」を設置。本来の目的はコートハンガーだが、古川さんは壁面にリズムをつくるアートとして活用。インテリアのテイストに合わせ、同色系のものをバランスよく配置している。

自分への“ご機嫌取り”ができる部屋。

玄関の扉を開けると、真正面の窓一面に広がる庭の緑がパッと目に飛び込んでくる。初めてこの部屋を訪れた時、その景色に「一目惚れ」したのだと古川真由子さんは言う。

住まいは都心から少し離れた住宅街にある、3階建ての集合住宅。この部屋に暮らして4年ほどになる。40㎡ほどのシンプルなつくりの1LDKだが、豊かな周辺環境と角部屋であること、L字型の間取りのおかげで、心地よい光と風が一日を通じて室内に入り込む。

「この集合住宅の魅力のひとつが中庭の存在で、中庭に面した3棟を同じオーナーが所有・管理しているため、それぞれに適切な距離と景観が保たれています。共用部が充実しているのも嬉しいですね」

手入れが行き届いた庭にはいくつもベンチが置かれ、パーゴラの下にはバーベキューができるファイヤープレイスもある。広々とした階段の踊り場にも椅子やテーブルが置かれ、緑を眺めながらゆったりと過ごせる。

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話しながらキッチンで手際よく洗い物をする古川さん。「家事は面倒だという人も多いけれど、私は料理や洗濯、掃除が大好き。特にキッチンに立っている時間が、一番心が穏やかになる」。

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四つ口コンロで使い勝手の良いキッチン。鍋をはじめとした調理道具は必要最小限に抑えるのが古川さんのルール。「良いものをきちんとメンテナンスしながら、長く使い続けるように心がけています」。

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L字の短辺の小部屋をベッドルームに。窓の外の緑を写したような色調のベッドリネンがお気に入り。壁の写真は、何度も訪れ、滞在したオーストラリアのクイーンズランドの風景を現地の写真家、ダミアン・ワッツが撮り下ろしたもの。

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半円形のアルテック「95テーブル」を2台組み合わせてラウンドテーブルに。欧州と日本のモデルとでは脚の高さが微妙に違っていたので、知り合いの家具職人に依頼し、高さをぴったり揃えた。

「豊かな暮らしは部屋のなかだけで完結するものではありません。窓からの景色、周辺の自然環境、近所のお花屋さんとの会話、1人でもふらっと立ち寄れるご飯屋さんなど、目的を持たずともぼんやりと自分らしい時間が過ごせる場所が、家の周辺にたくさんあることって、大事なことだと思うんです」

以前は目黒近辺に暮らしていたが、今の住まいがある地域は自然や光を心地よく感じられる“抜け感”があって、家にいる時間が増えたという。

「元々、帰巣本能が強くて外出してもすぐに家に戻りたくなってしまうんです(笑)。時間さえあれば、インテリアの配置を変えて模様替えを楽しんだり、好きな音楽を聴いたりしている。外で食事をするよりも、友人を招いて家でご飯をつくって過ごす機会が増えました」

穏やかなトーンの家具、コーナーを彩るアートやオブジェ。そのセレクトは秀逸だが、デザインの仕事に関わる人間としては、極端にモノが少ない方かもしれないという古川さん。そんな彼女がインテリアを考えるにあたり大切にしているのが「日常の感覚」だ。

「家にあるものは、毎日手に触れ、目にするもの。いくら素敵なデザインでも、使わないまま埃がかぶっていたり、棚のなかにしまわれていては、モノがかわいそう。なので私は、使い勝手が良いと信じる道具、そして大切な人から譲り受けたモノを自分の意識が届く範囲に置くようにしています」

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ベッドサイドの壁に掛けたポータブルスピーカーはバング&オルフセン社の「Beosound A1」。どの空間にいても音楽が楽しめるようにしているという古川さん。大好きな音楽を聴きながら、心地よく眠りにつく。

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シンプルな板の上に本や植物を置いて、モノの居場所を決めている。隣接する建物との距離が近い窓には縦型ブラインド、庭に面した窓には横型ブラインド、寝室はロールスクリーンと、遮光の仕方をアレンジしている。

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庭に面した窓辺の棚の上には、手にしたり眺めているだけで自分が “ご機嫌になる”アイテムを並べている。なかでも気に入っているのは、デザイナーの柴田文江と一緒に開発に関わった琥珀色をした水晶のペーパーウエイト。

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ガラス作家、志田真奈実が手がけたインセンス・ホルダー。実際にお香立てとして使っているが、空に漂う雲や静かな空気の流れを感じさせてくれる、モノとしての形や質感が好きだという。

年に1、2度海外に赴く機会があるが、古川さんにとっては、「旅行」ではなく、それも暮らしの延長線上の時間だ。

「現地でアパートを借りてスーパーに買い物に行き、自分で調理して食事をする。いつも通りの生活だけれど、地元の人が買う食材や日用品、街角でのやり取りを見ていると、自分の好きな“日常の景色”がよりクリアに見えてくる。そうした小さな発見と感動の繰り返しこそが、私にとっての豊かな暮らし。豪華でも、贅沢でなくてもいい。自分のちょっとした“ご機嫌取り”をするくらいの感覚がちょうどいいと思うんです」

夕方になると、西日が庭の緑をしたがい、部屋にきれいな光の帯を描きはじめる。そんな瞬間が、この家で一番好きな時間だと古川さんは微笑んだ。

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建物の設計は、建築家の泉幸甫。ロープで編み込みを施し、外階段の手すりを柔らかな印象に仕上げるなど、ディテールの端々に住宅作家らしいこだわりを感じる。

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古川さんの部屋から中庭を見下ろす。訪問時はちょうど庭の手入れがはいった直後。庭木の枝ぶりがすっきりとしているが、しばらく経つと、窓一面に緑の景色が広がる。

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