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プロに聞く_Vol.04

〈建築コレクティブ太太(ふとふと)/太田雄太郎〉
住まいのデザインと住み替えのコツ

Photo/Ayumi Yamamoto
Text/Hisashi Ikai
Edit/Tami Okano

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Photo/Ayumi Yamamoto
Text/Hisashi Ikai
Edit/Tami Okano

東京と長野に拠点を持ち、「人と土地の関係に新たな形式を与える」をテーマに活動する建築家の太田雄太郎さん。東京の住まいは隅田川に面した集合住宅の一室で、フルリノベーションに挑んだ自身初の住宅プロジェクトでもあります。「窓からの景色を第一に考え、また、余計な機能や過度な装飾を避け、等身大の自分を空間に写し取っていった」と太田さん。使われている素材は構造用合板などホームセンターで手に入るものばかり。そこから垣間見られる太田さんの建築思想を探ります。

PROFILE 太田雄太郎

1990年愛知県生まれ。2014年中部大学大学院修了後、隈研吾建築都市設計事務所に入所。設計室長として、〈湯の駅おおゆ〉〈富岡市役所〉〈日本アロマ環境協会拠点施設〉を担当する。2023年独立し、自身のアトリエ〈太太〉を設立。現在、東京と長野県木曽町に拠点を構え、建築設計の傍ら、地域素材を活用したプロダクト開発や古民家再生、宿泊施設運営なども手掛けながら、未来の暮らしのヒントを探求している。https://otaa.co.jp/

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余白や柔軟性のある、親しみやすい空間。

「上京したての頃、都内各所を巡るなかで、一番感動したのが隅田川の景色でした。僕が生まれ育った名古屋には市街地を走る大きな川はなかったので、こんなに広い川幅の河川がゆったりと流れている風景はとても新鮮だったんです。だからいつかは、隅田川が見える場所に住みたいな、と思っていました」

建築家の太田雄太郎さんがその夢を叶えたのは今から3年ほど前。仕事が安定してきたことをきっかけに住宅の購入を検討。「隅田川沿い」をキーワードに不動産サイトを検索したところ、唯一ヒットしたのが、1990年竣工のこの集合住宅だったという。

「川に面していて、視界を遮るものがないなど、立地条件は完璧でしたが、問題は間取り。玄関の近くに水回りがあり、廊下や個室で川に面した西側が分断され、せっかくの眺望を存分に味わえない造りでした。そこで、川の流れを基準にした配置計画を立て、フルリノベーションを行いました」と太田さん。どこにいても川が眺められるようにと、居室をL字のワンルームに変更。さらに、シルバーボックスのような浴室にも透明アクリルの大きな窓をはめ込み、入浴中も隅田川が眺められるようになっている。

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書斎側から部屋の長辺を見通す。リノベーション前は2部屋に分けられていた間仕切りの壁を取り除き、川面に沿ったL字形のワンルームに変更。写真右手が寝室、ダイニングを挟んで左手にキッチンがある。

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浴室とトイレ、そして洗濯機置き場などは、シルバーの亜鉛鉄板製のボックスの中に収めた。浴室には透明アクリルの開口を設け、入浴をしながら川の景色を眺められるようになっている。

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書斎の窓から臨む隅田川。天候によって異なる川面の様子や行き交う船を眺めるのも楽しみのひとつ。日が暮れると対岸のビル群に明かりが灯り始め、その夜景もまた気に入っている。

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改装前はベッドルームだった西側の一角。構造である柱を活かし、リバービューのコージーな書斎に。当初はここを仕事場としていた。中央区新川に事務所を構えてからは、主に「読書と考えごと」のスペースに。

現在、太田さんは二拠点生活で、この隅田川沿いのマンションと、長野県の木曽町の家とを頻繁に行き来をしている。もともと、木曽には太田さんの祖父母の家があり、子どもの頃からよく遊びに行っていたという縁の地。木曽での経験が、東京の家づくりにも影響しているという。

「木曽の祖父母は、森林管理や木曽ヒノキを用いたものづくりに従事していたこともあり、身の周りの環境や素材を暮らしに生かす感覚に満ちていました。建築家になり、東京に居を構えるにあたり、自分にできることはなんだろう。そう思ったときに、近隣のホームセンターで売られている普遍的な工業部材に目が留まりました」

この部屋のリノベーションでは、「身近で手に入る素材をそのまま使う」こととし、できる限りの無駄を省き、背伸びをしない、自身にとって親しみやすい空間を目指した。壁と床に用いたのは針葉樹の構造合板。浴室を囲む鉄板は屋根材として使われる亜鉛鉄板。最初は少し粗く、硬い印象だったそれらの素材も時間と共に味わいが増し、暮らしに馴染んできたな、と感じている。

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ベランダに出て、隅田川を眺める太田さん。ベランダには、書斎側からと寝室側からの2方向から出られる。「朝起きてすぐにベランダに出て、川面にきらきらと反射する光や、川沿いを走る高速道路の車の流れをぼんやりと眺めるのが日課です」。

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ベッド脇にあるL字の開口は、既存の窓枠を取り外し、構造材の壁を窓ぎりぎりにまで伸ばすことで、切り取られた風景を強調。カーテンなしで、朝日とともに目を覚ますのが心地よいという。

「住宅は、完成がゴールではないんですよね。住宅設計は、豊かな暮らしを歩み始めるための、“適切なスタートライン”を引く感覚が大切。人が過ごし、時を刻むなかで必要とされる余白や柔軟性も必要なんだと思います。それは、自分の家を自分で設計してみてより強く実感したことでもあります」

当初は、床の張り替えや壁の塗装など、内装に手を加える計画もあったが、しばらくは素材の経年変化を楽しむ予定。この部屋のさらなる改装より、「もし隣の部屋が空いたら購入して2戸を繋げてみたい、とか、機能や形式の拡張のほうに興味がある」と太田さん。

「建築家として、そしてひとりの人間としても、豊かな時間と体験を生む空間ってどういうものなのか。これからも経験を重ね、場所の可能性を見出していきたいと思います」

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浴室などを収めたシルバーボックスの入り口には取手をつけず、扉を閉めると一枚の壁のように見えるようにしている。玄関から続く躯体現しの土間は、「モックアップづくりや簡単なDIYにも便利」。

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川に面した西側の開口に対して平行に配した壁付けのキッチン。簡単には動かしにくい水回りの場所を大きく変更したのも特徴で、動かせない縦管は、あえて隠さず。スケルトンにした際に躯体が比較的きれいだったこともあり、天井も躯体現しのまま。

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ベランダへの掃き出し窓の手前には、木工作家、高橋成樹のスツール。他にも何点か高橋成樹作のオブジェを所有している。「機能性というよりも、抽象彫刻のような形や木の表情が好き」と太田さん。

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コンクリートの躯体に取り付けたフックにワイヤーを通し、日常使いの帽子やバッグをディスプレイ。衣類も含め、収納は「見せる収納」がメインで、その方が自身の暮らしが明確になり、より自分らしい空間になると考えている。

5 Questions!
住まいのデザインと住み替えのコツ

Q1 住まいの個性はどこに出る?

外観のような、いわゆる建物のハードではなく、日々の食卓に並ぶ器や壁に飾るアートなど、住まいの中のソフトの部分にこそ、暮らす人の好みが顕著に映し出されるものだと思っています。だからこそ、そのベースとなる建築はできる限りノイズを省き、ミニマムに作り上げていくようにしています。

Q2 家が「自分にフィットする居場所」になるために必要だと思うことは?

広々とした空間にいたいと思うときもあれば、狭い場所に籠っていたいこともある。同じ人でも、心地良いと感じる空間は状況によって変化するもの。ですから、その時々の自分にフィットするように、ひとつの家のなかにスケールの異なるさまざまな空間を用意し、適宜、居場所を選べると良いと思います。

Q3 ここだけはこだわったほうがいい、と思うプロ目線の住まいのポイントは?

リノベーションが前提であれば、間取りや設えはいかようにでもアレンジできます。でも、配管や給湯といった建物から切り離せない設備は変えようがありません。もし改築や改装を考えているのであれば、購入時に「何が変えられないか」をきちんと確認しておくべきでしょう。

Q4 住み替えるとき、何を一番に考えたほうがいいですか?

周辺環境です。例えば、窓から見える景色や街並み。僕は、隅田川沿いに住みたいという強い思いでこの家を見つけたので、窓から川辺の風景を見ているだけで幸せな気持ちになれます。また、普段買い物をする店の品揃えが良かったり、通いたくなるレストランが近くにあったりすると、暮らしの充実度は上がるもの。周辺環境こそ念入りにチェックすることをおすすめします。

Q5 住み替えてよかったことは?

建築家としての目線で言えば、実際に自分の手で住宅を設計したことでしょうか。満足していると同時に、反省点もたくさんあるので、今後の建築家人生では、この経験と視点を存分に生かしていきたいと思います。そして、この家から見る隅田川の風景はやはり格別なもの。この借景を自分の庭のように感じられる時間は、とても貴重だと日々実感しています。

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