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ペットとすむむ

東京都渋谷区
麻生要一郎

人も猫もごろりと横になり、
いつの間にか居眠りをする家。

Photo/Ayumi Yamamoto
Text/Hisashi Ikai

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Photo/Ayumi Yamamoto
Text/Hisashi Ikai

生まれたての迷い猫と生活を共にして17年。住む土地や環境、一緒に過ごす人々たちは変わっても、「愛猫のチョビだけは変わらず、傍らに佇み、静かに見守っていてくれた」という麻生要一郎さん。猫がのんびりと過ごせることを優先してリノベーションを依頼した麻生さんの住まいは、窓からたっぷりと日差しが差し込み、「人生のパートナー」でもある猫との穏やかな暮らしが広がっていました。

PROFILE Yoichiro Aso

文筆家、料理家。1977年茨城県生まれ。建築業から新島の「カフェ+宿 saro」の主人を経て、家庭的なケータリング弁当を提供する料理人に。人の思いや暮らしへの意識をもとにしたエッセイが話題となり、エッセイストとしても活躍。著書に『僕が食べてきた思い出、忘れられない味 私的名店案内22』『酸いも、甘いも』(ともにオレンジページ刊)など。

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南向きの窓から燦々と外光が注ぐリビング&ダイニング。キッチンの火口は壁側だが、調理中でも家を訪ねてきた友人と会話できるようキッチンカウンターを設け、水洗はカウンター側に。ダイニングへの見通しもいい。

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窓際に置かれたチョビのおもちゃや毛繕いの道具。苦楽を共にしたチョビは「飼い猫というよりも、人生のパートナーと呼んだ方がいいかもしれません」と麻生さん。

動物が巣をつくるように、家のことを考える。

料理家でエッセイストでもある麻生要一郎さんが暮らすのは、東京・千駄ヶ谷の住宅街にある5階建てのマンションの最上階。日当たりの良いリビング・ダイニングと、大きな書架がついたベッドルームが回廊で繋がっている。

「最初はこのマンションの2階の部屋を借りていたんです。でもひょんなことからオーナー姉妹に気に入られて、養子入り。その後、建物全体を相続することになって、現在はこのマンションの管理人をしながら姉妹が暮らしていた最上階に僕が住んでいます」

養子入りや相続といった大きな出来事を、飄々と話す麻生さん。聞けば聞くほどドラマティックな人生の傍らには、いつも白ぶち猫のチョビの姿があった。

チョビとの出会いは、麻生さんが伊豆諸島北部に位置する東京都の離島、新島で宿の仕事をしていたときのこと。親猫とはぐれて庭に迷い込み、住み着いて宿の看板猫に。その後、麻生さんが茨城の実家で母を看取ったときも、現在のマンションに引っ越してオーナーの養子に入ったときも、ずっとチョビは一緒だった。

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「旅先でもチョビのことを思い出して早く帰りたくなってしまう」という麻生さん。麻生さんが抱き上げてもチョビは平常心。「キッチンに立って、食べ物がもらえると思うときは寄ってきてくれます(笑)」。

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チョビのために、滑りにくい無塗装の無垢材を、と依頼したフローリング。居心地の良い場所を探して、回廊状の家をぐるぐると回るのがチョビの日課だ。リノベーション前は和室もあったがリビング・ダイニング、そしてキッチンを一続きに。

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ミュージシャンの友人が持ち込んだというピアノの下には、レコードプレイヤーのかたちをしたチョビの爪とぎ。猫草や猫玩具、ケアアイテムなどが人の生活用具と同列に、そこかしこに置かれている。

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窓辺に置かれた大きなソファがチョビの特等席。ぬいぐるみは、チョビへのプレゼントで、アームに置かれたユニコーンはドイツのシュタイフ製。ぬいぐるみに寄りかかったり枕にしている時もあるという。

波乱万丈をともにして17年。人間で言えば優に80歳を超える老猫になったチョビがひなたぼっこを楽しみながら、ただのんびりと過ごしてくれればいい。そんな思いを込めて、麻生さんの友人であり、同じマンションに事務所を構えるデザイナーの笹谷崇人にリノベーションを依頼した。

「最初はキャットウォークを設置することも考えたのですが、年寄りなのでそこまで機敏にチョビも動けない。せめて安心して歩き回れるように、床は滑りにくい無塗装の無垢材にして欲しいとお願いしました」

肌触りは良いが、汚れや傷が目立つのが無塗装材の難点。しかし、人間と同様に家もゆっくりと年老いていくほうが素敵だと麻生さんは話す。

「子どもの成長記録を残した柱の傷のように、家が汚れたりや傷ついたりした様子は、そこに人が暮らし、生きた軌跡そのものですからね」

足元をゆっくりと闊歩しながら、麻生さんに同意するかのように小さな声で「ニャー」とチョビが鳴く。広々と歩きやすいフロアが実現したおかげで、年老いたチョロの運動量も少しだけ上がったように感じると麻生さんも微笑み返す。

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東側に位置するベッドルームの壁一面に設置したオープンシェルフ。「好きなものを好きなように飾る」という麻生さんの言葉どおり、書籍のあいだに絵画や写真、帽子やオブジェがランダムに置かれている。

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寝室は約22㎡。ベッドと棚のあいだには、ごろんと横になれる畳敷きのスペースを設けた。縁無しの正方形の畳を板間とシームレスに繋げつつ、境界に真鍮を入れ、軽くアクセントをつけている。

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棚には若かりし頃のチョビの姿も。「チョビは僕がこの部屋に引っ越すよりも先に前オーナー姉妹に気に入られ、5階に住み始めていたので、ここでは『先輩』と呼ばなければいけないのかも」。

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ベッドサイドに設けた小さな書斎。リビングやダイニングなど、家のさまざまな場所で仕事をするというが、パソコンに向かい集中して執筆をするときは、この書斎が役に立っている。

インテリアのポイントは、リビングと寝室に設けたたっぷりサイズのオープン棚。書籍やアート、チョビの写真などが並ぶ。でも、設計時は棚に何をしまうのか、まったく計画をしなかったという。

「細かくプランを立てることがそもそも苦手というのもありますが、整理整頓が過ぎると緊張してしまい、なんだか落ち着かない。だから、欲しいものを集めては、手が届くところに貯め置いている。僕にとって家を住みやすくすることは、動物が巣づくりをする感覚に似ているのかもしれません」

麻生さんのインスタグラムには、日々、友人知人がこの家を訪れ、食卓を囲む様子がアップされている。「ご飯を食べに来たはずなのに、気付いたらソファに寝転がって居眠りをしている人もよくいます(笑)」。おおらかな麻生さんの人柄もあるだろう。チョビと同じようにごろりと横になり、穏やかな気持ちで過ごせる居心地の良さがこの家にはある。

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「リビングの窓から首都高を走る車の流れをぼんやりと眺めている時間も好き」と麻生さん。そのことを知っている友人からは、首都高の混雑状況を尋ねる連絡が入ることもしばしば。

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ソファは〈カリモクニュースタンダード〉の3シーター。「すっきりと暮らしたい」というのも麻生さんがこの部屋に求めたことのひとつで、ファブリックは猫の毛が目立たないグレーを選んだ。

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